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ファンタジートリビア

FT新聞のメインコンテンツ。
それはファンタジーの豆知識コーナー「ファンタジートリビア」。

わざと意表をつく知識を選んでいるという
中世ヨーロッパ、そしてファンタジーのTIPSは、
あなたの創作脳をビンビン刺激します。



ファンタジートリビアの作家は
杉本=ヨハネとロア=スペイダーです。
反響の高かったものをいくつか掲載します。


占い:No.26 ロア=スペイダー

トランジ墓:No.79 杉本=ヨハネ

垂れ乳のマリア:No.22 杉本=ヨハネ

食材の階級:No.97 ロア=スペイダー

中世上流階級のためのマナー講座:No.4 清水龍之介





 


占い


おはようございます。 意外と朝のテレビでやってる占いに気分を左右されやすい、ロア・スペイダーです。


今回は占いのお話です。今では色々な占いがありますが、昔で占いというと「占星術」です。
星や惑星の動きが運命を知らせるというものです。一見小難しい計算が必要でとっつきにくい印象を覚えますがそんなことはありません。
むしろ、庶民が親しんだ占いだったのです。
何しろ赤ん坊が分娩室で星占いをしてもらったという記録があるくらいです。
そのほかにも、腕輪や装身具に12宮星座や7惑星のシンボルを刻むのは、不幸を防ぐ安上がりなお守りでした。


ここまで流行した理由としては、まずコストが安いということでしょう。
動物を生贄にする必要がなく、お手軽に出来ることが受けました。生贄を使った後の後始末を考えると当然でしょう。
次の日の運勢を毎日占った後、生贄の残骸と血まみれの部屋の後片付けをすればラッキーも逃げるというもの。
 
もう1つは、権力者に愛されたということでしょう。特に弱かったのが皇帝。
権力をほしいままにしても、いざ大事な局面では人間の弱さがでるということでしょうか。
中には皇帝自身が占星術を学び、自分の治世だけでなく、結婚相手や時期すらも占って決めたとか。
しかし、この皇帝。この占いマニアが行き過ぎて晩年はかなり危ない方向に行っちゃってます。
災難が起こり、それが霊界の暗黒面が原因なとど考え始め、占星術を飛び越え呪術・魔術に熱中し始めます。
結果、魔術師を自称する者にだまされ、多額のお金を取られます。ちなみにその時この魔術師がやった黒魔術は、


「野ネズミを捕まえ、それを泉の水で溺れさせ、水を神格化させます。要するに生贄です。その水で清めたカブトムシ、交尾したことのない雌山羊の脂肪、コウノトリの卵、ヒヒの糞、タマネギなどを全部すりつぶしペースト状にして鉛の箱に入れます。その後呪文を唱えるとあら不思議! 人が死にます!」


……。魔術っぽい材料の中にタマネギが混じってるのは和みますが、どういう理屈で人が死ぬことになるのかわかりません。
しかしこの後、男が一人やってきて1時間後、気分が悪くなりさらに二時間後死んでしまったそうです。
この男。魔術師の仕込みの可能性が大なのですが、皇帝は度肝を抜かれすっかり信じたそうです。


ちなみにこの皇帝。賢帝といわれるほど立派な人物なのですが、この後この魔術師に、


「皇帝に夢を送って呪文の力を強めましょう」


といわれて、さらに倍の報酬を払ってしまったとか。挙句の果てに、この魔術師を図書館の終身館長職にしてしまいます。
この職業。学者や魔術師といった学問にかかわる者なら誰もが望む最高の役職。
彼が使ったのは人を呪い殺す魔法じゃなくて、お金持ちになる魔法だったのかもしれませんね。


あなたもご注意ください。未来を考えて準備することはいいですが、未来を知って思い通りにしようとすると大抵ひどい目に会いますから。






 


トランジ墓


こんにちは、杉本です。


今日は知られざる中世の横顔、トランジ墓の話をします。
この話をするとき、神学部出身である杉本の顔が色濃く出てしまうことをお許しください。
杉本はもの書きであると同時に学問に傾倒しているところがあって、この話は私のそちらの面抜きには語れない部分があります。
私が師事していた同志社大学の関谷直人先生が、「宗教と死」という授業で教えてくれたお話です。


◆トランジ墓
棺の上に、死者の姿を大理石で彫刻したのがトランジ墓です。
その姿が「キレイな」ものは、普通の墓ですよね。
トランジ墓は、醜くやせ細った姿で個人を描きます。
うじが涌いていたり、ヒキガエルがはりついたりしています。


まず、背景として、当時の貴族たちにとって、墓を芸術作品とするのはごく当たり前のことでした。
墓が芸術作品であるのなら、トランジ墓は何を表現し、訴えようとしているのでしょうか。
「死」です。
人間は死ぬ。
儚い存在なのだ。
自分自身をおとしめてみせるから、どうか厳しく断罪しないで欲しい。


誰に訴えようとしているのでしょうか。
神です。


14世紀〜16世紀のヨーロッパで、トランジ墓は作られました。
彫刻ですから、一般庶民が用意できるものではありません。
身分の高い者、金持ちにしか作れないものでした。
きっと、それなりに贅沢もしてきたのでしょう。
死後、その贅沢を罰せられるのが怖かったのでしょう。


◆どうも納得がいかない
このような方法で自分の罪を軽減させようという試みは、芸術の面から見れば、たいへん興味深いものです。
ですが、どうも気に入りません。
贅沢を罰せられたくないがゆえに、金をふんだんに使って大理石のトランジ墓を用意するというのは、なんだか本末転倒です。
その墓づくりこそ贅沢だ、と思うわけです。


◆四段重ねも
そんな矛盾を指摘する者もなかったのでしょう。
歴史的にはたいへん価値のあるトランジ墓が、いくつも存在します。
大規模なものになると、四段重ねのトランジ墓すらありました。


いちばん上は、若かりし日の自分。
二番目は、老いた姿の自分。
三番目は、死後腐敗した自分。
四番目は、本物の自分(遺体)。


自分自身をもトランジ墓の一部として、芸術を完成させるわけです。
非常に興味深いですね。


◆トランジ墓の研究者
この研究の日本での第一人者は小池寿子先生という方で、専門は西洋美術史ですが、生と死に関わる中世ヨーロッパ像に関する研究を続けられた方です。


私にとって、中世ヨーロッパ研究をされている先生方のなかでも、とりわけその生き方に強い印象を抱いた、不思議な魅力のある方です。
wikipediaには書かれていませんが、お亡くなりになられました。
生きているうちにお会いできず、残念に思います。
先生が見つめられた死の世界に旅立たれたことを知り、他の方の死とは違った、表現しがたい感情を覚えます。
謹んでご冥福をお祈りいたします。


それではまた。


 


参考文献:小池寿子著 (一九九四)『死者のいる中世』みすず書房
      キャスリーン・コーエン著 小池寿子訳 (1994)『死と墓のイコノロジー―中世後期とルネサンスにおけるトランジ墓』平凡社


追伸:ガルアーダの塔のご感想、お待ちしております。
お送りいただいた場合、かわらべ先生作のガルアーダの塔冒険記録紙をPDFでプレゼントいたします。
ステキなやつですよ〜^^





 


垂れ乳のマリア


 こんにちは、杉本です。


 アンケートに対するお答え、ありがとうございます。今後の指針になるお話がたくさんありました。大いに参考にさせていただきます。


 さて、今回のお話は呼び名。ロア・スペイダーの名前の由来のお話がありましたから、今日はこの話にしました。
  中世ヨーロッパには現在のような戸籍が存在せず、また平民には名字もなかったため、個人を厳密に区別することができないという不便がありました。
  この不便を軽減するため、人物には名前のほかに、別の言葉が添えられました。〜村のヨハン、といったふうにです。これは日本でもよくあったことです。宮本村の武蔵さんなどが有名ですね。
  添えられる言葉は出身地とは限りません。団子っ鼻のヨーゼフのように、身体的特徴から名前が取られることもありました。本人と名前を一致させることが目的ですから、このやり方は理にかなったものと言えます。


 さて、あなたは「垂れ乳」と聞いて、どのようなイメージを持つでしょうか。あまりいいイメージを持たないかもしれませんし、一般的にも悪口と思っておられるかもしれませんが、垂れ乳には多くのファンが現代ですらいます。
  「現代ですら」と表現したのは、中世ヨーロッパにおいて垂れ乳は非常に人気があったからです。
  価値観の相違といいますか。こちらはもう少し有名な話ですが、中世においては豊満な女性は人気がありました。栄養状態の悪いガリガリの女性よりも、豊かな女性が評価されたわけです。この流れで考えれば、どうして垂れ乳の女性に人気があったのかが理解しやすいかもしれません。垂れるほどの乳房もまた、豊かさの象徴だったわけです。
  中世ヨーロッパには娼館、つまり娼婦の館がありました。これまでの話はそこの女性たちにも当てはまります。管理するうえで、分かりやすい別の言葉を添える必要がありました。
  これは実際の話なのですが、ドイツに実在するある名簿には、〜村のヨハン、のような人物たちに混じって、垂れ乳のマリアという名前が記載されていました。ある娼婦に対して使われたこの言葉は褒め言葉だったわけですが、現代人が聞くとクスッと笑ってしまいますね。


それではまた。



 


食材の階級


神様が決めたと中世でみなされていたこと、それはものの「名前」「決まり」そして「階級」です。
人間も何でもかんでも「これは偉い。逆にこいつは地位が低い」といったランクを決めるのが好きな生き物です。
神は人を自分に似せて創ったと言いますが、そういうことなんでしょうかね?


この世の全てにランクがあり、神が最高位で地面にある岩や石が最低というように、昔は万物が全てランク付けされていたそうです。
当然食材にもランクがつけられてました。


最低ランクがタマネギやニンニクなどの球根類。
昔、ある農民が領主に「騎士になりたいから紋章をくれ」といったらニンニクを模した紋章をあげたそうです。
ニンニクは最低ランクの象徴でそんなのを紋章にして戦場で掲げたのであればいい笑いものです。
領主いわく、


「農民のお前にはニンニクのような最低の紋章がふさわしい。さあ、それで戦場に出て存分に笑いものになるといい」


とのこと。
皮肉たっぷりのお話に使われるほどランクが低いものでした。
基本、最低ランクの「地面」から生える植物類は、食材としては底辺という考えみたいです。


次に来るのが貝。
続いてエビ、カニ、ロブスターときて魚という順序になってました。
水の中での最高位は鯨とイルカ。
水面近くまで上がって空気を求める所がほかの生物より高等とみなされたようです。


その次に来るのが陸上生物。
ただ、これもランクがあり、豚が一番低く、羊は中間で牛が一番上にありました。


そして最上位にあるのが鳥。
ただ、鳥の中でも水辺にいる鴨やガチョウはランクが低く、鶏が中間。
最高は孔雀でした。
要するに、空に近い所によくいるほど神に近い=位が高いと思われてたみたいですね。。


では、昔の貴族はランクの低い食材は食べなかったかというと、そうとばかりは限りません。
たとえば、豚はあまりいい肉ではなく、食べると健康によくないと医者にもいわれる危険な食べ物でしたが、貴族達の中にはわざわざ食べてた者もいたそうです。
食通ぶりたかったのでしょうかね。
ただし、香辛料や調理法に工夫を加えて。


「鳥? そんなの飽きるぐらい食べてるよ。それどころか、俺は豚肉なんて危険な食べ物でも、美味しく食べれる方法知ってるんだぜ! 凄いだろう!」


っていう感じで。
貴族にとっては自慢できることが、何よりのスパイスだったのかもしれませんね。


 


参考文献
「ルネッサンス 料理の饗宴」
著者:デイヴ・デ・ウィット
訳者:須川綾子、富岡由美
発行所:株式会社原書房



 


中世上流階級のためのマナー講座


中世・上流階級のみなさま。


紳士淑女のためのマナー講座の
時間がやって参りました。


本日は「高貴な身分の方」へほめ方でございます。


問.
次の場合、どのようにお返事なさるのが適切か
お答えください。


ボルジア卿「噂のメディチ家を見てきたのか。
また随分と派手な家を建てたそうじゃないか。
やはり、たいそう豪華なものなのだろうな。
どうだ。君もそう思っただろう?」


ア. はい。とても豪華でした。
正直に言って、この家とは比べ物になりません。


イ. はい。豪華には豪華でした。
でも、そんなことどうでもいいです。


ウ. いいえ。言うほどでもありませんでした。
ボルジア卿の屋敷の方が立派です。


それでは、それぞれについて解説して行きましょう。


・アの場合
ボルジア卿「そうかそうか。
それじゃあ、この台に頭を乗せなさい。
しっかり首を固定して、と。
えーっと、刃を落とす装置はどこかな」
【結果】ざんねん!「うち首(斬首刑)」
【解説】いくらなんでも正直に言いすぎです。
もう少しオブラートに包んで言いましょう。
それに、ボルジア卿の口ぶりから、彼が
メディチ家を苦々しく思っていることを
察することができれば、なおよしです。


・ウの場合
ボルジア卿「やはりそうか。はっはっは。
(見え透いたお世辞を言いおって……
言いたいことも言えないこんな世の中、、、
というわけか!!)」
【結果】ざんねん!「毒殺(ポイズン)」
【解説】メディチ家の屋敷は噂になるほど。
ちょっと褒め方に無理があったようです。
ダジャレで殺されたのは不運でしたね。


・イの場合
ボルジア卿(ボ)「……」
あなた(あ)「流石に、豪華ではありました。
金に物を言わせてたくさんのものを揃えて」
ボ「ふうむ……(ギロチンを用意するか……)」
あ「しかし、やはり商人は商人」
ボ「む?」
あ「いかんせん、品がない」
ボ「ほう!」
あ「確かに豪華ではあります。
ですが、そこにテーマがない。統一感がない。
つまり、ただ派手なものを買い集めただけ。
言うなれば、指揮官だけの軍。喧嘩をします。
妙もなにもない。つまらぬものです」
ボ「そ、そうかね?(ざまあみろ、メディチ!)」
あ「その点、この家は違う」
ボ「む!」
あ「こうして、たたずんでいるだけで、
ボルジア家の主人がどのようなお考えで
これだけのものを揃え、あしらわれたのか。
そのようなことに思いを馳せることができる」
ボ「そ、そうか!(こやつ、わかっておるわ!!)」
あ「私はボルジア家のこのお屋敷に来ると、
ふと、こうして目を閉じたくなるのです。
我が家に帰ってきたような、歓迎されているような、
なんとも心安らぐ気持ちになってしまうのです……」
ボ「おい、ワインだ! 40年ものが残っていたろう。
お客様にお出ししろ!(素晴らしい客人に乾杯!)」


【結果】エクセレント!「歓迎の祝宴」
【解説】おめでとうございます。
そう、これがパーフェクトな回答です。
「古い貴族には格式をくすぐれ」。
これは原則として覚えておきましょう。


今回の回答は、
モーニング(講談社)に連載中の漫画
「チェーザレ」の一話を元にして構成しました。


とてもおもしろい漫画なので、
みなさまもぜひご覧ください。


それでは、ごきげんよう。


――清水=マドモアゼル=龍之介





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