FT書房はゲームブックを専門に制作する出版社です。

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想像の、旅に出よう






ゲームブック作法

FT新聞では、ゲームブックを作る方法もお教えしています。
FT書房は7年間、ゲームブックを作り続けてきました。
そのノウハウを余すことなくお伝えします。


ゲームブック作法の作家は杉本=ヨハネと清水龍之介です。
反響の高かったものをいくつか掲載します。


つまらない物語を書く方法:No.291 清水龍之介

素晴らしき選択肢:No.142 杉本=ヨハネ

ゲーム作りに必要な力:No.223 杉本=ヨハネ

現代で使える魔法:No.66 清水龍之介




 

つまらない物語を書く方法 その1「お使い」

From:清水龍之介
ゴールデン街の隣のSubwayより、、、


つまらない物語を書く方法。

これからあなたに
つまらないシナリオの作り方をお教えする。
得意分野である。

1.お使い(クエストシステム)
2.団子シナリオ
3.不発シナリオ

全部でこの3つをお教えするつもりだが、
今回は「お使い」についてだ。


■「『物語』について教えて下さい!」

この間、「物語の書き方を教えて欲しい」と
言われて、たいそう困った。

僕の知っていることなんて高が知れている。
僕に聞くより、良書を読んだほうが宜しい。

でもまあ、せっかく学ぶ気なんだから、
この本を読めと追い返すのも無粋だ。
で、僕の経験から話をしたのである。

とりあえず、
「物語に必要な物は何だと思うか」
と尋ねてみた。


■奴がやって来る……!

「物語に必要な物は何か?」

大先生気取りである。
お恥ずかしい。

すると、大先生を前に彼は、
ドラクエ1を例に出し、「だから物語にはこういう要素がなければいけない」と言った。

ドラクエ1が、物語……だと?


おや……?


大先生のようすが……

(デンデンデンデン♪)

危ない……!
大先生を怒らせると……
時空のひずみがっ……!


さて、時空のひずみは置いておいて、
僕はドラクエ1が物語だとは思わない。
あれはRPG入門編みたいなものだからである。


■お使いシナリオとは

ドラクエ1のようなシナリオを
「お使い」という。
デフォルメするとこんな感じだ。

竜王を倒すには「光の玉」が必要で、
「光の玉」は「風の谷」にあって、
「風の谷」を行くには「地の鎧」が必要で、
「地の鎧」は「魔法の扉」に守られていて、
「魔法の扉」は「盗賊の鍵」で開いて……

これが「お使い」である。

「お使い」には必然性がない。
「なぜそれが必要なの?」
という理由がない。

いきなり光の玉を手に入れることができれば
それで物語は先に進む。
盗賊の鍵も、地の鎧も、べつに必要ない。
ただの「邪魔」なのだ。

邪魔が入って回り道すること。
これが「お使い」シナリオである。
こういう展開は、安直でつまらない。


■「お使い」は排除せよ

物語に障害は付き物だとは言っても、
邪魔されることが楽しいわけではない。

次回詳しく触れるが、
障害とは、主人公の次の行動の原動力に
なるようなものでなければならないのだ。

ミステリでいうと、

1.自分の恋人が自殺したと連絡が入る
2.どう考えても自殺でなく、他殺だと主人公には分かる
3.警察に他殺だと訴えるが、一蹴される

この3が障害である。

この障害・抵抗によって、
主人公の行動はさらに大きな加速を得る。

プレイヤーだってそうだ。
物語を解決したくてたまらなくなる。
それがシナリオなのだ。


さて、次回は物語の肝になる
「障害」について、
そして、それを失敗してできあがる
「団子シナリオ」についてお話する。

つまらない物語を書く方法を知り、
それらの方法を回避できれば、
あなたの物語はまた一つレベルアップするだろう。

それでは、乞うご期待。


――清水龍之介


P.S.
ちなみに、iPhoneアプリなどで、
未だにお使いシナリオを展開する
他国のRPGを見かけるが、
RPG慣れしてしまった僕らから見れば、
とても陳腐に見えてしまう。
「お使い」をやりたいプレイヤーはもういないのだ。




 

素晴らしき選択肢

 おはようございます、杉本です。
  ちょっと早い配信でスミマセン。
  今日はゲームブック作者の最高峰に位置する、スティーブ・ジャクソンの技法についてお話します。



◆若き杉本の悩み
  自分が創るゲームブックのレベルを上げたいと常に考えてきた私は、壁にぶち当たって苦しんでいました。壁はいくつかありましたが、そのうちのひとつは技術的な問題でした。
  私の悩みは簡単に言うと、「前の自分を超えたい」という一点に尽きました。自分の技量があって、その技量を超えたい。そのためにするべきことは大きく分けて2つ。1つはただひたすら鍛錬すること。もう1つは、他者の技法を盗むことです。
  人の技法を盗むという行為は、決して悪いことではありません。古来より、弟子が師匠のワザを見て学んだように、むしろ一般的な行為でした。学ぶという言葉は、まねるに由来するのです。
  私の心の師匠(HUGO HALL氏)からもたくさんのことを学びましたが、そのとき私がパクったのはジャクソンのほうでした。



◆疑問とその経緯
  誰かのワザを盗む際には、盗む前に疑問が必要です。
  「選択肢のせいで答が丸わかりなとき、ジャクソンはどんな書き方をしているのだろう?」これが今回の疑問です。ちょっと説明が要りますね。
  当時、私はある吸血鬼ものの短編を書いていました。短編は結局仕上がらなかったのですが、吸血鬼と対決しているシーンで、私は選択肢を書きました。

・銀の短剣を持っているなら15へ進め。
・持っていないなら87へ進め。

 ごく普通の選択肢です。でも、当時の私は、この「普通の選択肢」が、いたくカユいものに感じられたのです。背中がムズムズするような心地悪さ。なぜかというと、この選択肢を見た人は即座に「ああ、銀の短剣を用意してなきゃならないのね!」と、気づいてしまうからです。自分のやっていることがいかにも野暮ったいように思えたのは、成長の証だったのかもしれません。でも、解決手段が分かりませんでした。



◆ジャクソンの狡猾さ
  困った。ウマいやり方があればそれを活用したいが、そんなのあるのか? 考えるなか、私は大学院時代に学んだ鉄則をここでも適用することにしました。「煮詰まったときには過去の偉人の知恵、文献に頼れ」と。
  そこで、吸血鬼や不死の怪物と戦うシーンのあるゲームブックを探し、いいやり方はないか調べてみました。
  『盗賊都市』のザンバー・ボーンとの対決。必要なものがあらかじめ堂々と告げられているので、何の参考にもなりゃしません。
  『恐怖の神殿』の幽鬼との対決。それらしい道具がいくつか並んでいて、正解を選べれば当たり、という方式。銀のボタンがいかにも正解くさく、悪くはないものの、少々物足りません。
  そうして探すうち、ついに見つけたのです、答を……!



◆答えは『城砦都市カーレ』に
  スティーブ・ジャクソンの<ソーサリー!>シリーズの第2弾、『城砦都市カーレ』に答えはありました。主人公と死霊が戦うシーンでの選択肢です。この死霊には銀の武器しか効きません。しかし、ジャクソンは「銀」という単語を用いることなく、この選択肢を乗り切るのです。
  死霊との戦闘に至るまでの間に、ジャクソンはいくつかの工夫をします。まず、城砦都市カーレで入手できる弓矢は1種類だけ、「矢じりが銀でできている弓矢のみ」に絞っています。
  そのうえで、死霊と出会った際の選択肢として、戦うを選んだ後の選択肢をこう展開するのです。

  九九
    あなたは剣を使う(一五一へ進む)か、斧を使う(一二五へ進む)か、そ
   れとも弓矢を使う(一四七へ進む)か?

 見事なものです。
  ここに至るまでに弓矢を手に入れている読者は「ああ、弓矢が銀だから弓矢を使おう」となります。しかし、手に入れていない読者は、たとえ「死霊は銀の武器だけが効く」という情報を手に入れていたとしても、正解が弓矢であることが分からないのです。
  「銀の武器を持ってなきゃ、どっちみち死ぬんだから同じじゃん」という方は、大事なことをひとつ忘れています。ゲームブックは何度も死んで、何度もやり直すのが前提のゲームだということです。死にゆく者は生き返るので、不要な情報を与えるやり方はゲームの質を下げるのです。
  まず第一に、この仕組みなら、弓矢を持っていなくても「あーこれ詰んだ」とは思いません。そして、次に進んだ先でいきなり死んでビックリするのです。不意を突かれて驚いている間に冒険が終わってしまうという、ジャクソン特有の「訳の分からない間に死んでいた」驚きの演出に成功しています。
  そして、こちらが本題ですが、この九九番の選択肢で「剣や斧を選んだ読者」が死霊に殺されて再挑戦することになっても、「よーし、次は銀の弓矢を探しちゃうぞー」とはならないわけです。「斧や弓矢のほうが良かったのかな……? でも、死霊と戦うのにそんなの関係ないよな。となると、番号ジャンプ(パラグラフジャンプ)の情報を獲得できていなかったかな? うーん、まだまだ冒険の奥は深い」となるわけです。

1.弓矢を手に入れた場面で『矢じりが銀でできている』と書く。
2.「死霊は銀の武器だけが効く」と、他の場面で教える。
3.戦う場面で「銀」という単語を出さず、「弓矢」とだけ表現する。

 これだけのことですが、情報を効果的に制限するという点において、そうとうに工夫されています。



◆パクるぞ!
  この技法に気づいてから、私の作品の雰囲気はかなり変わりました。決定的な分岐点を決定的ではないように見せることで、作品の真のルートを読者側から単純化しにくくすることができるようになりました。
  核となる情報は選択肢に書かないこと。これが教訓です。
 
  ジャクソンは他にも、さまざまな工夫をしています。その創意は意地悪でもあり、読者を夢中にさせるサービス精神に溢れているとも言えます。ですが、今回紹介するのはこの1つだけにしておきます。続きはまた、次の機会に。 さすが王者、さすが創始者です。
  私はその王者のやり方を吸収して、ゲームブックの再興という野望に向け、また一歩近づいたというわけです。

 それではまた。



 

ゲーム作りに必要な力

 こんにちは、FT書房の杉本です。

 ゲームブックを書いていますか。ゲームブックでなく、小説を執筆していますか。今日はゲームブックを上手に制作する上で、欠かせない技術について触れます。このテーマは、ゲームを創る場合にも、小説など執筆活動を行う際にも役立つものです。
ゲームブックを書く上で重要な能力は大きく分けて5つあります。文章力、構成力、ゲーム性、ツール性、そしてキャラクターです。ちょっと長くなりすぎてしまったので、2回に分けてお送りします。今回はキャラクター以外の4つについてお送りいたします。



◆文章力
文章力は、ゲームブックのすべてが文章で成り立っている以上、必要不可欠なものになります。ですが文章力と一言に言っても、さまざまな力がそこに含まれていることに気をつけてください。
ゲームブックに関する文章力という場合、3つの力が主に必要とされます。ゲーム的な解説をする力、説明をする力、そして描写力です。
最初の力は登場するアイテムや、ワナにかかった際のダメージ処理などを、読者に誤解なく伝える力のことです。これは、ゲームブックをある程度書くうちについてくるものです。逆に言えば経験が少ないうちは「ここの説明文が2通りの解釈ができるので、書き換えたほうがいい」などと読者に指摘され、顔を赤くする経験をすることになるでしょう。私もしました。この力は、どんなタイプのゲームブック執筆者にも必要なものとなるでしょう。
残りの2つは、目指すゲームブックのスタイルに応じて、どちらかがより必要かが決まってきます。それについて、もう少し詳しく説明しましょう。
ゲームブックに対する、2つの異なるアプローチが存在します。ひとつは、客観的に情報を提供していく形式。どこに何が置かれていて、敵がどんな様子でたたずんでいるか。明かりはどのぐらいあるのか。そんなことを説明するのが文章の中心にあるゲームブックです。「火吹き山の魔法使い」などが、代表的な例と言えるでしょう。情景描写が文章の中心となるため、必要なのは分かりやすい、丁寧な説明です。あるいは、簡潔であまり細かすぎない解説も魅力的です。いずれにしても、淡々とした文章で話が進む傾向があります。
もうひとつは、ドラマチックに話が展開するパターンです。ストーリーのあるゲームブックにはこのタイプになります。こちらに必要な力が、描写力になります。主人公を取り巻く人物の心理描写や物事の推移、読者を惹き込む力が問われるのです。杉本=ヨハネとして私が挑戦しているジャンルです。



◆構成力
構成力は、ゲームブックを創るうえで非常に重要な能力です。複数の選択肢が与えられるゲームブックでは、Aの道を進んだ読者とBの道を進んだ読者が生まれます。それぞれの読者が後半で同じ番号に至るのですから、違う視点を持つことがしばしばあります。構成力の高い執筆者は、ここでそれぞれの読者に、違う印象を効果的に与えることができるのです。どの道に進んでも楽しい。このようなゲームブックを構成しなければなりません。
このような力に自信のない執筆者は、一本道に近いゲームブックを創るのが吉でしょう。選択肢の少ないゲームブックも確かに存在します。「雪の魔女の洞窟」などがその一例で、ファイティングファンタジーの世界を旅しながらゲームが続きますが、場面場面を効果的に描写することで、ワクワクするゲームは十分に創れる可能性があります。ただし、執筆者が描写力がしっかりとあることが大事です。構成力も描写力もロクにない執筆者は、作品を発表しない方がいいでしょう。



◆ゲーム性
ゲーム性は大事です。この言葉の指す範囲は広く、多岐に渡っています。能力値はどうか。ラクすぎる冒険になっていないか。ゲーム的な仕掛けは凝ったものになっているか、驚きはあるか。などなど。
ゲームブックにおけるゲーム性は、いくつかの要素に分類できます。ひとつは能力値。ひとつは魔法などの付加要素。ひとつはフラグ処理。他にもあるでしょうが、主立ったところはこの辺りです。



◆能力値
私たちはファイティングファンタジーのルールを採用しているので、基本的な能力値は3つです。ここに付け加える1つの能力値は大切です。「地獄の館」では「恐怖点」という能力値が、ゲームに絶妙な面白さをもたらしました。恐怖点が増えるにつれて、じわじわと発狂の危機にさらされていきます。そのじわじわ感がゲームとしてのハラハラにつながり、面白さを増しています。
新しい能力値は、そのゲームのテーマとマッチしているものであるべきです。たとえば「少年の成長」を取り扱ったゲームブックを創るとしましょう。少年が少年の心を持ったまま大人になっていき、世界を救うという内容だとします。人々の中心に少年がいつもいるには、彼にカリスマがなければなりません。ここで扱うべき能力値として「魅力点」を用意してもいいのですが、もっとゲームを面白くする方法があります。能力値を「純粋点」のようなものにし、減りやすく増えにくい能力値として扱うのです。少年が少々卑怯なことをするなら、生き残るのはたやすいでしょう。しかしそれでは、大望を成就させることができないというジレンマを用意するのです。
ここで扱うべき能力値は、ゲームをほとんど複雑にしないものの方がいいでしょう。扱う能力値が多い状況は歓迎できません。電源系ゲームであればその負担は主にパソコン(ゲーム機)が担ってくれますが、ゲームブックでは読者がその能力値をすべて管理するのですから。



◆付加要素
ここでいう付加要素とは、魔法の選択などを指します。これはゲームへの彩りとして機能する、重要なポイントです。ここでも「能力値」の項で言及した点が肝要です。つまり、魔法使いが活躍する話を書きたいのなら、その魔法使いがどのような魔法を扱えるかが非常に重要だ、ということです。ありきたりなものは、目アカがついてしまっているのでマイナスです。目アカとは、人の視線に多くさらされたもののことです。皆がよく目にするものは、新鮮味がないのです。だからといって、突拍子もないものが好まれるというわけではありません。付加要素もシステムの一部ですから、不必要な冒険は禁物です。テーマや内容に沿った必然性に応じて、新鮮ないっぷう変わった付加要素があるべきなのです。例を挙げて説明しましょう。
ロア・スペイダーの【大魔導城のワナ】は、城の内部に潜入して領主を暗殺する冒険です。この冒険では潜入という行為が不可欠で、そのために主人公は服装を次々に交換していきます。ある場面では「料理人の服」を選び、もう少し奥に進んだら「兵士の服」に着替えます。いずれの服においても、戦闘を行えばそれらの服は「血塗られた服」に変わります。「血塗られた服」はどこにいっても騒ぎのもとにしかなりません。
このように、システムとテーマは一体であるべきなのです。城の内部に潜入するには、変装がもっとも効果的な手段でしょう。主人公は変装を繰り返して城の内部へと侵入し、武力は必要最低限しか振るわない。これが、ロア・スペイダーの描いた「暗殺」の物語でした。
付加要素の使い方の例として、参考になればさいわいです。



◆フラグ処理
フラグ処理は不可欠な要素ですが、これも不必要に入れないようにしましょう。あくまで管理するのは読者なのです。複雑な作品は、電源系ゲームに任せればいいのです。
FT書房では、フラグ処理は主に道具を持っているか否かで行っています。そして、その道具には基本的に、何か効果をひとつ付加させることが多いです。たとえば持っていると運点が1点増加する幸運のお守りを道具として出して、フラグ管理の道具としても使うのです。幸運のお守りを手に入れるには老婆に親切にしていなければならず、後から「幸運のお守りを持っているなら」と選択肢を設け、持っている読者を導く、というわけです。この方法のメリットは、2つあります。1つは、読者が面倒な気持ちにならずにフラグ管理を行ってくれる、という点です。もう1つは、フラグ管理をしていると気づきにくくなる点です。
制作者によるフラグ管理を避ける、古典的な手段があります。パラグラフジャンプです。どこか特別な情報を得られる場所を用意したら、そこに「これはいい情報を得た。もしこの情報が役立つ場所に来たら、その番号に77を足した番号に進むことができる」といった文章を用意します。そうすれば読者は、管理しているという気持ちにはあまりならず、より積極的に受け止めてくれます。冒険が無事に進行しているという印象を抱くでしょうし、かなり楽しいはずです。パラグラフジャンプはゲームブックに特有の行為で、しかもある特性があります。それは、ジャンプが自発的な行為だという点です。これはかなり「ゲームブック的」なアクションです。それでいて、ゲームブックの限界を超えた行為であるとも言えます。通常の選択肢を選ぶ際と異なり、パラグラフジャンプは自発的で、常に気を配っていなければ飛ぶ場所を見落とすようなタイプの事柄です。そして、情報がなければそこでジャンプすることができないようになっているので、「なんとなく」で選択肢を選んでクリアする、というわけにはいかなくできます。注意しなければならないのはパラグラフジャンプを入れる頻度で、1つのゲームブックに20ものパラグラフジャンプを入れるのは、いささかやり過ぎです。私の感覚では多くて7〜8個ていどでしょうか。クリア難易度を高めたいなら、多く入れるのもいいでしょう。また、クリアに関わらないところにボーナス要素としてある場合は、たくさんあってもいいと思います。味付けていどで十分なら、2〜3個で十分です。



◆ツール性
これこそ、私がもっとも扱いたかったテーマです。ゲームにおけるツール性は非常に重要なテーマなのですが、ここに関する意識が発達したクリエイターは数が少ないのが現状です。それでは、ツール性とはなんでしょうか。
ツール性とは、触った感じ、やってみた感じなど、そのモノに触れた際にダイレクトに受ける印象のことです。たとえばiPhoneのタッチパネルは、触れてみると新鮮な印象を与えます。フリックのような動作によって、これまでにない画面の切り替わり方をしますよね。あれは、新しいツール性を提示しているのです。
別の例を挙げます。スーパーマリオブラザーズというゲームがありました。任天堂の看板ゲームです。あれこそツール性をもっとも大切にしているゲームの代表で、どんな人間がプレイしても直感的に楽しめるゲームです。とりあえず跳んで、亀を踏む。プーンという音を立ててジャンプして、ポコッという音を立てて亀をやっつける。それだけで楽しい。やるべきなのは、先に進んでいくことだけ。これがツール性の例です。
ゲームブックのツール性とは、なんでしょうか。言うまでもなく、本であることです。紙をめくる感触、サイコロを振る感覚。そういったものを大切にし、楽しむことこそツール性です。逆に言えば、制作者側はツール性が楽しめるゲームブックを創ることを、常に意識しなければならないのです。ツール性に関しても、新しいもの、創造があるに越したことはありません。たとえば、カバーをめくると秘密の言葉が書かれているなど。ここで「創造的なツール性」について、あまり言及することはできません。ツール性を盛り込んだ作品は貴重で、それをここで触れるよりも、作品に盛り込みたいと思うからです。
ゲーム性を大事にする作家は多くいますが、ツール性を大事にしている作家はそうはいません。それができている作家の代表が、HUGO HALL氏でしょう。「虹河の大冒険」など、その代表格です。ネタバレが起こってしまうので、興味がおありの方は遊んでみてください。
スーパーマリオブラザーズの例からも分かるとおり、ツール性の高いゲームは、爆発的なヒットの可能性を持っています。ゲーム性がいくら高くても、頭の悪い人には伝わりにくい面があります。その点ツール性が高い商品は、誰でも楽しめます。ゲーム性よりもツール性の方が、そういう意味では重要と言えます。「とりあえず遊びたくなること」。これ以上に重要なテーマはありません。

 長くなりました。
今回はこれにて。


 

現代で使える魔法

今日は、昨日のボスの記事を受けて、
「現代にも使える魔法」
をあなたにお届けしたいと思います。



■岸部一徳似の美人


ちょうど3年ほど前の話です。
冬の新宿で終電を逃した僕は、
全然馴染みのない、安いバーを見つけ、
そこでなんとか夜を明かそうとしました。


そこは混んでおり、店員の態度も横柄で、
落書きとシールが壁に張り付き、なんだか
居心地が悪かったのを覚えています。


カウンター越しに店員に話しかけられ、
何か話しているうちに、隣に座っていた
岸部一徳似の美人と会話になりました。


当たりさわりのない会話が続き、
刺激のない会話に少し飽きてきた僕は、
止せばいいのに、


「経験豊富そうだね」


みたいなことを
冗談めかして言いました。
完全にセクハラです。


言ったあとの雰囲気で、
なんだかまずいことを言ってしまったぞ、
と気づいたのですが、女は爆笑しました。


そして、おもむろに振り返ると、


「タツヤ、この人が、アタシ遊んでそう
とか言ってんだけど!」


と大声で言いました。



■全身刺青の男、召喚!


呼ばれて歩いてきたのは、若い男でした。

彼は余白が許せないたちなのか、
手の甲や首にまで刺青を入れていました。
帽子を深くかぶって、不気味な感じです。


僕はこの危険な男の「彼女」を捕まえて、
完全に「パンパン」呼ばわりしたわけです。
パンパンて。戦後か。


さて、僕はまた、やらかしました。


彼のあまりのインパクトに、
その場に立ち上がってしまったのです。


こうなると僕とタツヤは鼻を突き合わせて
正面から睨み合う形になってしまいます。

タツヤはダブダブの服で、細身でしたが、
いわゆるボクサー体型で、躊躇なく
殴ってきそうな雰囲気がプンプンします。


彼は僕を見ると、弱そうだと思ったのか、
心底馬鹿にした様な顔つきで、
下から舐め上げるように睨んできました。


ハッ!
弱そう、だって?


 


……正解!


さて。


あとは、どうやって少ないダメージで
気絶するかです。


僕は完全に剣闘士ユーグでいうところの
弱小戦士フェイリークスでした。
負け確定。



■現代に蘇る「魔法」


ほんとうに偶然でした。


タツヤが歩いてきて、
もう殴られる覚悟ができたとたん、
彼のTシャツの柄に気づいたのです。


それは、15年くらいまえに流行った、
伝説的HIPHOPグループのTシャツでした。
それをまだ着ているということは、
このTシャツは彼の主張である可能性が高い
……ということが直感的にひらめきました。


彼はもう、腕を振り回せば、
僕に拳が当たるくらいの距離にいます。
賭けに出るしかありませんでした。


僕は彼に、こう話しかけました。


「Buddha(ブッダ)?」


そう。
それは彼の着ていたTシャツ、
「Buddha Brand(ブッダブランド)」
の愛称です。


その瞬間。タツヤは立ち止まり、
ぽかんと目を見開いたかと思うと、
一気に満面の笑みに変わりました。


彼は僕の肩に腕をかけると、
思ったより低い声で、静かに言いました。


「誰?」
「え?」
「ブッダの誰よ?」


つまり、誰のファンか? 
ということでしょう。


僕は少し考え、
「DEV LARGE(デブラージ)」
と答えました。


答えを聞いた彼は、いきなり大声で、
「N.I.P.P!」と叫びました。
これはメンバーの飛葉飛火の別名です。


僕は「緑の五本指!」と答えました。
これも飛葉飛火の別名です。


そして――


彼は笑顔をこちらに向けると、
明るい声で「何飲む?」と聞きました。



■心を掴んだ魔法の正体は?


僕はタツヤのグループに受け入れられ、
朝まで刺激的な時間を過ごしました。
最後には、友情のようなものも感じていました。


そう、現代にも生きる魔法。
それは何だったのでしょうか?
もう、お気づきですね。


それは「共通言語を話すこと」です。


「仲間」であることを示す
共通言語を話すことができたら、
一気に相手と信頼関係(ラポール)が
築かれることがあります。


僕の共通言語を聞いたタツヤは、
僕を「傷つけてはいけない仲間」だと
今回は認識してくれました。



■城塞都市カーレでも、、、


言葉が通じたら、一言で打ち解ける。
それは現代の裏ワザですが、
実はゲームブックでも見受けられます。


我らのスティーブ・ジャクソン。
城塞都市カーレの最後の「北の門」で
その描写があります。


異国の言葉で話す彼らに、
翻訳呪文「RAP」を使って
彼らの言葉で話しかけると……


彼らはとたんに親切になります。
どうやらスティーブも
現代の魔法に気付いていたようですね。


拙作魔の王の少年でも、悪魔やエルフと
言葉が通じる時に大騒ぎになります。
ご存じのあなた。……ありがとうm(_ _)m


現代の魔法、「共通言語」。
ここぞという時に決めると、
大逆転が起こるかも?


――清水=D.G(ドラゴン)=龍之介


P.S.
調子に乗って付け焼刃が露呈すると、
「仲間でない」ことが印象づけられます。
やりすぎ注意!


P.P.S.
冒頭の詩(※ホームページ非掲載)は
完全に僕の作ったリリック(歌詞)です。
かっこいいなー。


P.P.P.S.
先週の動画はいかがでしたか?


もし、見られなかった方はyoutubeにて
「アランツァ・ザ・マジックワールド」
と検索してみてください。


タイトルは
アランツァ・ザ・マジックワールド 解説動画/前篇
です。

ご感想をおまちしております!






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